2014年1月16日

映画 Paris, Texas パリス・テキサス

今回は閑話休題、またニュージーランドからは離れて私の好きな映画のお話。

Paris, Texas



1984年にドイツ人監督、Wim Wenders ヴィム・ヴェンダースによって制作されたこの映画、いわゆるアート系フィルムで、ロードムービーと及ばれるジャンルの映画を代表する一作。もう何度見直したか覚えてないくらい。

私がこの映画を好きな理由は、
1、映画の中にでて来る風景
2、静けさ、沈黙
3、悲しい、でも現実的に複雑な愛を描いたストーリー
4、ライ・クーダーによるスライドギターのサウンドトラック

次に一つずつ説明させて頂きます。

ちなみに、この映画の全てが好きすぎて、この映画のライ・クーダーによるサントラについてもこちらで書いてます。

1、映画の中にでて来る風景

この映画を初めて観たのは高校3年か大学1年の時、親友の亮に連れられ、池袋だったか新宿の名画座の様な映画館に行った時。当時は多感な10代の時期。大好きだったサッカーを辞めて、人生について考え、不安と希望を抱えてた様な時期。ただ日本には住まずにどこか外国で生きてみたいとこの時期には心に決めていました。

あまり芸術については今でも解りませんが、私がこういった映画にのめり込んで行った理由の一つは、スクリーンを通して観れる、もうあたかも触れられるくらいの外国の風景や雰囲気。まるで自分が映画の中の世界、風景を旅している様な錯覚に毎回落ち、いつかは自分もこんな所を実際に訪れ、直に目にしたり臭いを嗅いだりしてみたいと常に思っていました。

で、この映画。オープニング。初っぱなからガツンとやられました。テキサスの広大な、地平線の広がる真っ赤な乾いた風景の中を、小汚い赤い帽子を被った男が、白いプラスチックのボトルを手に歩いている。その風景の広大さに一発で見せられてしまいました。これは後に、砂漠フェチとして、幾つかの世界の砂漠を訪れるきっかけにもなったくらいです。

2、静けさ、沈黙

この映画全般を通して比較的静かです。不必要な効果音とかありません。もうそれこそテキサスの圧倒的な荒野の静けさに圧倒される様な感じ。それこそアート系映画の典型。物語の内容、カメラワーク、俳優陣の演技力,そして後で述べるライ・クーダーのスライドギターで勝負です。

また、主役トラヴィスを演じるHarry Dean Stanton ハリー・ディーン・スタントン。最初30分くらい一言も喋りません。まあ役柄、ストーリーとして、4年間荒野をひたすら歩き続けて彷徨っていたのを、ある出来事から弟に連絡が行き存在が知られるのですが、まあ(あまり現実味は無いですが)4年もひたすら彷徨ってりゃそりゃ口聞けないわなってとこですが。


3、悲しい、でも現実的に複雑な愛を描いたストーリー

物語としては、基本的には愛の物語。超単純にまとめれば、若い女性と大分年上の男性の間の愛が、長男の誕生をきっかけに崩れて行き、やがてはこの男性がこの愛は幸せに成就するものでは無いと悟り、去って行くと言ったもの。もちろん、実際ストーリーはもっと濃密で複雑で、色々な伏線があります。

男性の女性へに向ける愛がバランスを失い、一方的な愛へと替わり、やがては狂気を含む様なものへと変貌し、二人の関係に終わりが訪れる。しかもこの女性が何の手がかり、痕跡も残さずただ彼と子供の前から消え去ってしまう。

また、こういう芸術映画では顕著に使われる、映画内での『象徴』が多々出て来ます。

例えば、冒頭1、2分で出て来るシーン。

先ほども言った様に、オープニング、一人の色褪せた赤い帽子を被った小汚い髭もじゃの中年男性が、テキサスの真っ赤な土の荒野を足早に歩いていて、そしてぱっと立ち止まり、右手に手にしたミルクボトルから最後の一滴まで搾り取る様にグビッと飲み干します。そしてふと顔を上げ辺りを見渡すと、岩山の上に鷹だか鷲の猛禽類の鳥が一羽彼を見下ろしています。これは何を意味し、表現しているのか?彼の存在の危弱さ、それともこれから待ち受ける不吉な前途?を表しているのか?何度考えても結論は出ずじまいです。


4、ライ・クーダーによるサウンドトラック

これはもうまた別に記事(実際に書いちゃいました)を設けるしか無いくらいの事で、ここでは簡単に。この彼によるスライドギターのサウンドトラックがもう完璧にテキサスの荒野の背景にマッチしていて、今まで知ってる中でのサウンドトラックとしてはこれを超えるものは無いのではないかというくらい。

かつてアメリカを旅し、アリゾナでの似た様な真っ赤な土の風景にぴったりと合ってました。その頃はカセットテープ!に録音したこのアルバムを、ウォークマン!で聞いてました。(何とも時は流れ、時代は変わったものです。)

このRy Cooder とWim Wenders のコンビは後に、これまた素晴らしい映画 Buena Vista Social Club を作り出す事となります。この映画についてはまた述べてみたいと思います。

てな訳で、この世であまり知られていない映画の御紹介となりました。ここニュージーランドでも、この映画を口にするキィウィにはであった事はありません。

話はそれますが、その点やはり日本は文化的に先進国だなと思う事があります。やはり東京にいれば世界中の映画が見れますからね。その選択肢の多さと言ったらやはりニュージーランドとは比べ物になりません。一方で、時代が変わり、インターネット上、アマゾンやiTunesで大抵の映画が見れたり買えたりする様になりましたから、以前に比べればそれほど不満は減りましたけどね。

今回はここまで。

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